8/16/2008

風力発電メーカーの進出

アニメのクラシックになった宮崎駿監督の大作の「風の谷のナウシカ」は、英語版も出されるなど、アニメの世界で風力を使って自活するライフスタイルを描いていた。私たちの子どもが何度も何度も見た作品なので強い印象となって残っている。谷と言えば、何か風とつながるような印象となったのはそのためだ。ボールダーもボールダーバレー(渓谷)と言われるように一応「谷」なのだろうが、広さが広いので、日本だったら平野か大きな盆地に近い印象だろうか。風が吹くときは強風に感じるが、アメリカ政府が出している風の地図を見ると西側の山々の天辺は理想的な風力発電のソースのようだが、平地に来ると、よほどボールダーの東側に行かないと理想的な風力発電のソースとはならないようだ。

しかし、ボールダーが再生可能なエネルギーの一大中心地になろうとしていることから、そこに世界で最大の風力発電タービンメーカーのVestas社(デンマークの企業)が、事業を拡張することになった。その拡張によりコロラドでの新規従業員数は1350名に達する規模の風力タービンの生産拠点となる。これは、これまで2拠点あったところに2拠点を追加してくるというものだ。Vestas社は、世界に設置されている大型の風力タービンの23%のシェアを誇り、世界中に既に35,500機以上のタービンを設置してきた、この分野では超大手企業だ。

ボールダーから西に約30分のところに造られる二つの工場では、タービンの翼を生産し(650名)そうしてもう一つの設備においてはタービンハウジングを造る工場ができるようだ(700名)。同社は既にボールダー北西のウィンザーの街に翼を造る工場(200名)を有しており、今後650名の規模までに雇用が増大するらしい。Vestas社は、また、コロラドにおいて、タービンや翼の基礎となるタワーを造る工場も造ることを5月に発表している。ただし、その場所については、まだ明らかにされていない。これらの工場のキャパシティはタービンハウジングが年に1400機、翼が1800機、そうして、タワーが年に900機規模になる模様だ。

アメリカはこのように急速に代替エネルギー、再生エネルギーの強化に動き始めている。それは政府の方針と云うよりは、民間企業が今後のエネルギー需要を見込んで自らリスクを冒し動いているものがほとんどだ。ボールダー、その中で徐々にキーとなるような役割を担うことになりそうだ。コノコ・フィリップス社の代替エネルギー研究所の設立に始まり、電力ガスのエクセルエナージー社のスマートグリッドなどの実験などは、ボールダーのエネルギー地図を完全に塗り替えて行くことだろう。

8/10/2008

ボールダーの政治的傾向


今年は4年おきに行なわれる選挙の年だ。現在大統領候補のマッケインとオバマが、シノギを削っているところだが、アメリカで民主党候補、共和党候補といわれてもピンと来ない方も多いだろう。そのために、共和党の価値観と民主党の価値観の違いをほんの少しだけ触れるようにしよう。

マッケイン候補は共和党だ。共和党は、元々は政府など公的部門(small government)を最少限にして、個人の発意でものごとを進めれば、ことがうまく行くと考える政党だ。なるべく政府の規制を排除して、公的部門の活動を少なくするので税金が低くなり、個人の自由のもとで事業ができるようにしたいというものだけに、一般的には経済界にサポーターが多い。しかし、もともと共和党の党理念と絡んでいるのか判らないが、伝統的な家族を中心とした価値観や宗教観を推し進めているために、アメリカのバイブルベルトや保守層の間でもサポーターが多いのも事実。実業界に強い反面、所得層の低い白人などの基盤なども持っている政党だ。以前は別かもしれないが、最近では比較的、強い愛国主義者が多く、自国中心の考え方が強くなっている。マッケイン候補は、独立独行な共和党異端者(maverick)と言われており、完全な共和党マインドではないが、ブッシュ現大統領と施策では90%以上同じだと云う点で保守的な候補には違いない。

オバマ候補は民主党候補だ。民主党は伝統的には、組合など労働運動の組織をバックにしていることからも、小さな政府よりは、政府の福祉厚生などでより積極的な施策、労働者の保護、弱者の保護をとってきた傾向がある。政府の活動を高めるというポジションから、支出が増大すると見られており、高額所得者への課税強化、つまり、所得の再配分を目指す傾向も強い。なので、ビジネスマンや事業家の中には民主党の経済政策を支持しないことが多い。民主党は、社会政策をより積極的にとることで知識人やリベラルな人にサポートをされるところが多い。また、民主党のオバマ候補は、アメリカ企業が海外投資をしていることで職を輸出しているとの立場を取っている。そのような企業に対しては、税制優遇策を与えないようにしようという政策を打ち出そうとしている。エネルギー政策では、代替エネルギーの開発で、エネルギー自給独立を訴えており(マッケインも似たところがあるが、より沖合油田の石油掘削を積極化しようとしている)、環境派的な代替エネルギー促進を主としている。

11月に行なわれる選挙は、大統領選挙だけでなく、上下両院の選挙も行なわれ(上院は3分の一しか改選されない)、州議会、市議会などの地方自治体レベルまで変わるのである。

今日は長い前置きだが、なぜこのように説明してきたかというとボールダーの政治的な傾向をお知らせしたくて書いたまでのこと。ボールダーは、リベラルの牙城と見られており、民主党傾向がとても強い。郡の公職にある人で、選出された共和党系の人はいない。それ程リベラルなのだ。当然、こちらはオバマ候補者を立てようとする傾向が強い。コロラド州は、牧場主などが多くこれまで共和党派を支持する人が強かった。しかし、コロラドの発展に伴い、人口流入が多くあり、多くのハイテク系の人たちが入ってきている。そのために、共和党保守派の安全な選挙区だったコロラドが接戦州の一つになると見られている。ボールダーは、その中では異色な自治体なのがよくお判りいただけるものと思う。しかも、その傾向はますます強くなってきているのだ。まさに異色派ボールダーなのだ。

8/08/2008

成長の苦しみを味わうクロックス

数年前にクロックスのサンダルが出てきたとき、あんな履物はデザインが悪く、流行らないだろうと考えた人も多かったはずだ。私もその内の一人だった。しかし、予想に反し、あの変わったデザインで、パステルカラー調の派手派手な履物は全米のみならず、世界的なヒット商品になってしまった。ヒットには浮き沈みがある。現在、クロックスは売り上げ減だけでなく、商品特許についても認めてもらえず、自ら切り開いた市場に類似品の出現で苦戦している。そのクロックスが今年に入ってから、三度目の従業員の整理を発表した。今回は75名の人員削減とのことだ。

クロックスは、ボールダー発の企業だと云うことを知っている日本人は少ないかもしれない。日本では幼児がエスカレーターにおいて靴が巻き込まれ怪我したことがマスコミに報道され、とてもネガティブなイメージが蔓延したと思う。消費者の安全性を第一に考える必要はあるが、日本では安全表示のためにエスカレーターに黄色で枠が塗られており、その範囲内で立っていれば怪我していないだろうと推測される。なのにメーカーの責任としてマスコミが大騒ぎをしている。もちろん、靴が安全に越したことはないが、日本ではサンダル履きなどをしている子供いる訳で、サンダルが悪いと云う人はいないだろうに、クロックスだけが責められることはおかしい。大人がクロックスを履いていたら、エスカレーターの淵に足を置くことはまずあり得ない。それを見守れなかった親の責任はどうなのだろうかと思う。当然、怪我した子供の親の気持ちとしては大変なことだろうが、メーカーだけの責任にしてしまうところは問題が片手落ちの気がしてならない。正月によく餅が喉にからまって死ぬお年寄りの方も多い。気の毒だが、役所が介入したり、マスコミが報道して誰も餅を食べてはいけないとはいわないのと同じことだろう。


今回の解雇とエスカレーターの問題は同じベースの話ではないかもしれない。私はクロックスの履物を常用しており、その履き心地の良さは、他のサンダルなどとは比べ物にならないと思っている。ボールダーの会社だから応援しているのではなく、使用したときの利便性、履き心地、などは上等だと思っている。しかも、クロックス社は、一つの商品に依存するのではなく、ギアーやアパレル、その他の分野にも商品開発を進めて、ブランドとして認知度は米国はもとより、多くの国において急激に高まった。投資家からファンドも出るなど、企業の成長性も大きく期待されるようになったのだ。あの、サンダルだけの会社では無くなってしまっている。

解雇前の雇用数値を見て行くと、全米においてクロックスは1849名の従業員を抱えていたと言う。ボールダーにおいては550名いたと言うのだ。会社が商品を売り始めたのが2002年末というから、その急成長ぶりに驚かされる。商品点数SKUもものすごい勢いで伸びてきており、従業員の増加とともに、消化不良を起こしたのだと考えざるを得ない。ウォールストリートが求める利益目標が高過ぎると云う点でも、上場をしてしまった欠陥があるのだろう。不要なプレッシャーがあるから、不要なリスクを冒してしまっているのだ。

クロックス社は、昨日のプレス発表で、自社の販売見込み数値に見合った組織の大きさにするように戻すと明言した。また、誰彼構わなく売っていた口座を整理して、自社店舗や大手の販売をしてくれるところに集中をしようとしていることが目標のようだ。恐らく、商品群についても、売れ筋のものに力を入れ、売れ筋でないものについては整理をして行くことだろう。急成長の苦しみから開放されるのには、もう一度背骨をしっかりと立て直す必要が出てくる訳で、その作業に入ったのだと思う。

ここで日本のマスコミに一言を言いたい。ものごとを報道するときは、もちろん怪我や問題発生のときは報道せねばならないだろうが、メーカーだけの一方的な責任として押し付けずに、親の指導の足りなさ、不注意なども指摘するようにして欲しい。階段を上っていれば、親子の健康にも良く、足腰を鍛えることにもなる。タイプ2の糖尿病など、子供の「成人病(生活習慣病)」対策にも良いはずなのでクロックスの使い方を良く理解した上での積極的な活用をお願いしたい。ジビッツなどで爪が剥がれた件なども報道されているらしいが、私が子供の頃、サンダルを履いていて、多くの怪我もしたのを思い返すと、メーカー非難を考えたこともなかった。何もしないで靴が壊れると云うのなら欠陥品だが、使用者が常識外の使い方をするのであれば、自己責任はどうなのかしっかりと考えて欲しい。

そう言えば、ボールダーでエスカレーターは少しあるが、皆はしっかりと歩いて怪我などしていないようだ。日本の親は子供をしっかりと歩かせることで、日本の子供もたくましく育だててもらいたい。

8/06/2008

ボールダーのスーパーの改造改修合戦

現在ボールダーでいくつかのスーパーで一大改造工事が行なわれている。その最も大きいのはボールダーにおけるホールフーズのボールダー旗艦店の売り場面積倍増計画だ。ホールフーズの破竹の成長の勢いがここへ来て鈍化しているのは、その他の通常のスーパーもホールフーズの独擅場にさせておかないという強い対抗行動と意気込みが増えてきているからだ。しかも、ホールフーズが、現在の店舗の隣にあった本屋のバーンズノーブル社を別のビルに移動させて、自らの店舗面積を倍近くに拡大して、ロハス・メッカのボールダーにおいて圧倒的なポジションを確立しようとしていることに対しての警戒反発の印でもある。

これに対して、今年の初めにできたサンフラワーマーケットも、当市の一つの大きなナチュラルスーパーの撹乱要因になっている。数年前に大手のセーフウェーが北ボールダーでライフスタイル実験店舗を展開して、すでにホールフーズの売り上げを喰い始めていたように、ボールダーの中央部にできた、サンフラワーマーケットは、ホールフーズの新たな手強い競争相手となり、選択肢が増え、ボールダー市民を喜ばせている。

今度は、南ボールダーにあるKing Sooper(テーブル・メサ・ショッピングセンター内)も大きな改修工事のまっただ中だ。そうして、年内までには、ホールフーズから数ブロックの距離にあるKing Sooper30番街とアラパホー街の店舗も改修されることが予定されている。

改造改修の目的は、陳腐化した店舗をより時代の要請に合わせようというものだが、一つには店舗のエネルギー効率の向上が目標になっているものの、当然のことながら、最新の競争相手のテンポに歩調を合わせようと云う目論見は見えてくる。特に、ホールフーズに近い店舗の改造には相当力を入れることが予想される。

元々ボールダーのワイルド・オーツチェーンを買収したホールフーズは、傘下に入った各店舗の改修に手間取ってきたが、ここへきてその改修に力を入れ始めている。モタモタしてはいられなくなったのかと云う感じだ。それについては、また別の機会に書くことにしよう。

King SooperやSafewayの改修とともに、力が入ってきているのはナチュラルやオーガニックフーズへの力(商品)の配分変化だろう。そうしてもう一つはっきりと打ち出されているのは、ナチュラルでローカルの青果物の配分向上だ。もちろん、地元近郊の酪農製品の取り扱い品目も増えている。

テーブル・メサのKing Sooperの改修の完成は10月22日の予定だそうだ。その後は、ホールフーズに近い30番街のものに力が入ることだろうから、ナチュラルスーパーのホールフーズが、コンベンショナルなスーパーと真っ向から対決することになり、ボールダーのスーパー事情は大きく変わることになる。

これまで、ナチュラル、オーガニックスーパーはいわば、ニッチの市場だった。それが、各社のナチュラル・オーガニックビジネスへの本格的参入で、アメリカで最も激戦区になることが予想され、ホールフーズがここでどのように巨大店舗を展開するのか、優位を維持するのか見物となることだけは確かだ。ここの写真は今年の5月に撮影したものだが、ホールフーズに暗雲がかかっているのは何か現状の状態を示唆しているようにも見える。もちろん、ホールフーズの発展を願うが、競争状況が一段と強くなってきていることは間違いない。日本からも、多くのロハス関係者などがボールダーを訪れているが、この刻々と変わっていく市場の変化を、このブログで少しでも感じてもらうことができれば幸いだ。この、変革がもたらすものは、もちろん、新たなサービス業態の発展だろうし、他社を少しでも引き離すために、各社がシノギを削ることによって、全米のナチュラルスーパーの今後のとるべきであろう実験や道筋が少しでもよく見えてくることになるだろう。