10/31/2006

マラソンのメッカ

ボールダーがマラソンのメッカであるということは今さら何も新しい情報ではない。日本のランニング雑誌やテレビ報道でも大きく取り上げられるからだ。高地訓練に適しているとか、天気がよいからだとか、インフラが整備されているからだと言われるが、私はそれだけでボールダーが、高地訓練のメッカになっているとは思えない。高地は他にも多くあり、別にボールダーでなくとも天気がよいところは多くあるからだ。インフラと言ってもアメリカの中型都市ならば、病院などはきちんと整備されているはずだ。

ボールダーがマラソンのメッカになっているのは、そもそもここにそのコミュニティが出来上がっているからだと見たい。コミュニティというのは、生活共同体をしているということではなく、幅広いランニングに関する知恵が蓄積されているところだということだ。ここではスポーツマッサージを始め、多くの整体治療をやっている専門家がいるだけでなく、スポーツ生理学も大学の重要な学科の一つであり、スポーツ専門の病院などもある。また、ランニングシューズなどを始め、ニーズが高いためか、選択肢の幅も広く潤沢な商品取り揃えがあり、ランニングウェアーなども豊富で多彩だ。ランナーが走りやすいために、街中至るところにトレイルが巡らされており、起伏あり、きれいで安全な走行路がある。しかも、アスファルトやコンクリートでない道路を探そうと思えば、ボールダーには舗装されていないところもありランナーが選ぶコース次第でこれも多彩なものになる。

街中にかなりレベルの高いアマチュアのランナーが走っていることも受け入れの環境が揃っているといえる。世界中から有名な選手が来て訓練をしていることも励みなるだろう。近くからでなくとも、どのように訓練をしているのか把握できる点も魅力的だろう。街が安全だということも見逃してはならない。オーガニックのように、ここのランナーの層が厚くなってくると、必然的にさらに良い人が集まってくる相乗効果がありそうだ。

ニューヨークタイムズの、主要記事としてこのボールダーが取り上げられている。写真も見れるようになっているので、ご覧いただきたい。アメリカの主要紙であるニューヨークタイムズがこのように一つの視点でボールダーを取り上げているのは、よほど大きなポイントだと見ているからだといえよう。

10/22/2006

From Tea to Tofu


筆者はボールダーの歴史博物館の理事という職にある。ボールダー歴史博物館の理事会などで、話し合うことはボールダーの持つユニークな歴史を現代とどのように繋げていくか大事な点だと思っている。まさに街の歴史は生き物であり、刻々と変わっているだけでなく、そこに住む人たちが仕事をしながら、街の歴史を形成しているからだ。

これまでも何度か書いてきたが、ボールダーはまさにオーガニック産業が大きな柱になっており、ここの産業人の大物の中にはオーガニック産業で財を成した人は多い。その人たちが、ビジネスを成長させた後で、ビジネスを売っぱらって作り上げた財で、今度は次の世代のサポートをとり、投資家という視点で次のウェーブを盛り上げるということを繰り返している。そこに、ボールダーならではの、投資顧問やオーガニック関係のマーケティング、リサーチ、広告産業などと裾野は毎日広がっている。

歴史博物館は、このボールダーの有機産業に焦点を当てて、展示を行っている。会期は後6ヶ月以上あるので日本からも多くの人に来ていただければと思う。今回の展示会の名称はFrom Tea to Tofuだ。つまりセレッシャルシーズニングス社のハーブティーに始まり、ホワイトウェーブの豆腐などを指したとてもぴったりした名称だ。先週末は、ナチュラリーボールダーというイベントが行われた。それについても別途日本の読者の方にお知らせしたい。写真をまとめているところなので、もう少し時間をいただきたい。

どうも秋口は、日本からの訪問者の数、こちらの出張の予定(先週はボストン、今週からメキシコに行ったりする)などでブログが少し遅れていること心からお詫びしたい。ボールダーで起こっている面白いことは多くある。それをどんどんと報告をしよう。

10/12/2006

ビーガンバーガー

このブログの読者に対して失礼かもしれないが、ビーガンの説明をしたい。Veganは菜食主義者の中でも最も厳格な菜食主義者であり、卵やミルクなども食さないヒトたちのことだ。蜂蜜なども、蜂と云う昆虫を通じて作られるから、それも食さない厳格な主義主張をしているヒトたちだ。ボールダーにはビーガンのヒトは予想している通り数は多い。

ベジェタリアンやビーガンのヒトたちが、アメリカの中でファーストフードから切り離された存在だったことは不思議なくらいだが、それは彼らが主流の市場を形成していないと云うことの現れだったと言える。しかし、アメリカの中での大きな潮流を見ていくと、ベジェタリアンになっている人の数は増えている気がする。ビーガンまでは行かなくとも、菜食主義者と云うのは社会的にかなり認められた存在になってきたのは事実だろう。

ベジェタリアン用のハンバーガーはある。その名前もガーデンバーガーと云う。しかし、アメリカの象徴のようなビーガンバーガーは、ここボールダーで始まろうとしている。今年の11月に、ビーガンバーガーのお店が開店する。しかも、まだ一店舗目もで来ていないのに、もう既に数カ所でチェーン展開を始めようとする凄い勢いが出てきた。まだ、ボールダー近辺で始まるにすぎないが、最近の食に対する関心の度合いを考えると、全米へ広まる可能性も大いにあると云えよう。ロゴも、いかにも60年代のポップアートのようなデザインだ。味がおいしければ、顧客のニーズと合うことは間違いないので、成長企業の一つになるだろう。成長を暖かく見守ってあげたい。

10/07/2006

オープン・スタジオ、花咲く芸術の秋

ボールダーの街はヒーリング、オーガニック、スピリチュアル、スポーツ、ITなどで知られた街だが、芸術を忘れることはできない。全米で、芸術に関してトップの街だが、マラソンと同様市民参加型の芸術鑑賞は盛んだ。

今週末と来週末の土日4日間にわたり、登録をした芸術家たちが自らのスタジを市民に開放をすると云う仕組みだ。しかも、代表的な作品を市の図書館に一堂に展示をして、芸術家の品評会的なものをすることができるだけでなく、どのスタジオに行くのかの事前調べもできる。もちろん、少しおカネを出せば、その年のプログラムに参加をしている芸術家の作品が載っている作品集と、それらのスタジオがある場所の地図が掲載されているプログラムを買うことができる。

この催し物で楽しいのは、プロの芸術家も居るが多方面の芸術を趣味でやっている人たちがスタジオを開放するために、美術館巡りとは違った家庭の味を味わえるだけでなく、芸術作品が作られた、それぞれの環境にも接することができて、美術館では得られない、人間タッチが出てくる。

ボールダーの芸術家は、そのように気取らない開放的な人たちなのだ。今年はできていないのであれば、是非とも来年は訪れていただきたいものだ。

10/02/2006

高地訓練法がダイエットに効く!

ボールダーが日本のマラソン選手の高地訓練として使われていることは多くの人が知っている。高地訓練が盛んになったのは72年のミュンヘンオリンピックの頃からだそうだ。ボールダーのフランク・ショーター選手が2:12:19.8で金メダルを獲得したのが一つのきっかけだったと云われる。その後日本の歴代のマラソンの女子選手でオリンピックメダルを取った人たちは軒並みボールダーで高地トレーニングをするようになった。高地トレーナーとしてのビジネスも出るなど、高地とボールダーは切っても切れない関係が出来上がった。

ボールダーで高地訓練を受けることは誰にでもできることではないし、世界各国の競合アスリートたちは、高地訓練にかわるトレーニングの器具を求め始めたといってよい。そのような市場の要請に応えてきた会社がColorado Altitude Trainingと云う会社だ。この会社.が行っている事業は面白い。要するにこの会社が行っていることと云えば、いろいろな形態の疑似高地空間を作り出して、人が休むとき、あるいは訓練をするときにその空間利用をさせている。利用者はアスリートに限らず競争馬だったり、軍だったりしていると云う。

この会社のウェブサイトを見るとクライエントの中には多種多様なスポーツの超有名選手がいる。それだけ勝つことに、職業を賭けている人たちだが、低酸素状況を人為的に作ることによってスタミナや多くのメリットを生み出すことが判ってきているようだ。このような商品を作っている会社が、Aestis Incと云う別会社を作りスポーツ選手に限らず、今度は高地生活状況による、ダイエット効果を見出し、それを商品化することを発表した。しかも、そのエビデンスのためにかなりの実験を行うことを行い始めている。

Aestis社が導入をしたのはThinAir Systemと云うもので、超肥満対策に使うとしている。この商品が市場に出るのにはまだ3年はかかるだろうとのことだが、超肥満に悩むアメリカとしては、運動もせずに、食事制限もせずに、ここで高地シミュレーションテントで寝るだけでやせるという。ThinAirがシミュレーションをするのは海抜 14,000 feetレベル、つまり富士山の高さよりも高い高地状況だそうだ。高地でもこの高さに至らないとダイエット効果にメリットがないからだそうだ。このような高地になると、食欲が減退してくるだけでなく、一方では新陳代謝がかなり進むようになるとのこと。これが、今回の売りになるのだろう。この方式を使って、既にオランダの学者が実験を済ませている。

ダイエット効果を求めて、ボールダーの科学者は面白いことを考えたものだ。まだ多くの実験が残っており、投資家の参画を求めるとのことだが、実行できるのであれば、かなり面白いことになりそうだ。それにしてもそこまでして超肥満対策を組むことを考えるというのは、アメリカの状況もよほど悪いと見なければならないだろう。