8/08/2008

成長の苦しみを味わうクロックス

数年前にクロックスのサンダルが出てきたとき、あんな履物はデザインが悪く、流行らないだろうと考えた人も多かったはずだ。私もその内の一人だった。しかし、予想に反し、あの変わったデザインで、パステルカラー調の派手派手な履物は全米のみならず、世界的なヒット商品になってしまった。ヒットには浮き沈みがある。現在、クロックスは売り上げ減だけでなく、商品特許についても認めてもらえず、自ら切り開いた市場に類似品の出現で苦戦している。そのクロックスが今年に入ってから、三度目の従業員の整理を発表した。今回は75名の人員削減とのことだ。

クロックスは、ボールダー発の企業だと云うことを知っている日本人は少ないかもしれない。日本では幼児がエスカレーターにおいて靴が巻き込まれ怪我したことがマスコミに報道され、とてもネガティブなイメージが蔓延したと思う。消費者の安全性を第一に考える必要はあるが、日本では安全表示のためにエスカレーターに黄色で枠が塗られており、その範囲内で立っていれば怪我していないだろうと推測される。なのにメーカーの責任としてマスコミが大騒ぎをしている。もちろん、靴が安全に越したことはないが、日本ではサンダル履きなどをしている子供いる訳で、サンダルが悪いと云う人はいないだろうに、クロックスだけが責められることはおかしい。大人がクロックスを履いていたら、エスカレーターの淵に足を置くことはまずあり得ない。それを見守れなかった親の責任はどうなのだろうかと思う。当然、怪我した子供の親の気持ちとしては大変なことだろうが、メーカーだけの責任にしてしまうところは問題が片手落ちの気がしてならない。正月によく餅が喉にからまって死ぬお年寄りの方も多い。気の毒だが、役所が介入したり、マスコミが報道して誰も餅を食べてはいけないとはいわないのと同じことだろう。


今回の解雇とエスカレーターの問題は同じベースの話ではないかもしれない。私はクロックスの履物を常用しており、その履き心地の良さは、他のサンダルなどとは比べ物にならないと思っている。ボールダーの会社だから応援しているのではなく、使用したときの利便性、履き心地、などは上等だと思っている。しかも、クロックス社は、一つの商品に依存するのではなく、ギアーやアパレル、その他の分野にも商品開発を進めて、ブランドとして認知度は米国はもとより、多くの国において急激に高まった。投資家からファンドも出るなど、企業の成長性も大きく期待されるようになったのだ。あの、サンダルだけの会社では無くなってしまっている。

解雇前の雇用数値を見て行くと、全米においてクロックスは1849名の従業員を抱えていたと言う。ボールダーにおいては550名いたと言うのだ。会社が商品を売り始めたのが2002年末というから、その急成長ぶりに驚かされる。商品点数SKUもものすごい勢いで伸びてきており、従業員の増加とともに、消化不良を起こしたのだと考えざるを得ない。ウォールストリートが求める利益目標が高過ぎると云う点でも、上場をしてしまった欠陥があるのだろう。不要なプレッシャーがあるから、不要なリスクを冒してしまっているのだ。

クロックス社は、昨日のプレス発表で、自社の販売見込み数値に見合った組織の大きさにするように戻すと明言した。また、誰彼構わなく売っていた口座を整理して、自社店舗や大手の販売をしてくれるところに集中をしようとしていることが目標のようだ。恐らく、商品群についても、売れ筋のものに力を入れ、売れ筋でないものについては整理をして行くことだろう。急成長の苦しみから開放されるのには、もう一度背骨をしっかりと立て直す必要が出てくる訳で、その作業に入ったのだと思う。

ここで日本のマスコミに一言を言いたい。ものごとを報道するときは、もちろん怪我や問題発生のときは報道せねばならないだろうが、メーカーだけの一方的な責任として押し付けずに、親の指導の足りなさ、不注意なども指摘するようにして欲しい。階段を上っていれば、親子の健康にも良く、足腰を鍛えることにもなる。タイプ2の糖尿病など、子供の「成人病(生活習慣病)」対策にも良いはずなのでクロックスの使い方を良く理解した上での積極的な活用をお願いしたい。ジビッツなどで爪が剥がれた件なども報道されているらしいが、私が子供の頃、サンダルを履いていて、多くの怪我もしたのを思い返すと、メーカー非難を考えたこともなかった。何もしないで靴が壊れると云うのなら欠陥品だが、使用者が常識外の使い方をするのであれば、自己責任はどうなのかしっかりと考えて欲しい。

そう言えば、ボールダーでエスカレーターは少しあるが、皆はしっかりと歩いて怪我などしていないようだ。日本の親は子供をしっかりと歩かせることで、日本の子供もたくましく育だててもらいたい。

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